「EINSATZ(アインザッツ)」レーベルはLPの時代に我々クラシック・ファンの耳を潤してくれたにもかかわらず、CDの時代に入ってから現在まで全く陽の目を見る機会を失った人類の至宝とも言うべき名演奏を発掘し、最良の音質でCD化して紹介して行きます。
メジャーレーベルに属しながらも全く着目されずCD化の対象から外されている音源や、当時マイナーレーベルから発売され、名演ながらもその存在を忘れ去られた貴重盤など、未CD化のものが主に対象となりますが、過去CD化されるも1度きりで消え去った名演や、また現役盤でも酷い音質で改善すべきと判断したものも再登場させていく予定です。当時のLPが発する「息遣い」をそのままCDにパッケージし、その温かみをダイレクトに感じられる。これがアインザッツの「音」のポリシーです。
なお、50年以上にも遡る往年のLPを音源として使用しておりますので、経年による盤質の劣化等によるノイズ、歪みが発生する場合がありますので、その点はご了承下さい。
「アインザッツ」レーベルの復刻の技術面は「ザンデンオーディオシステム」の山田和利氏が担当。特に海外で評価の高い山田氏の活動は、オーディオ誌『オーディオ・アミーゴ』で度々紹介されています。氏はイコライザー・カーブに着目し、独自の製品を開発していますが、当「アインザッツ」レーベル
でもそれが駆使されています。
音楽愛好家の間ではLPの信奉者も多く、CDの音に対する批判をよく耳にしますが、オーディオ機器の生産に携わっている立場からすれば、再生側の問題が気になります。今回、LPの復刻(CD化)に参画したのも、その実情を確かめたかったからです。そこで、LPの再生には現状で求められる世界の最高峰を用意しました。カートリッジはZYXのモノーラル仕様。プレーヤーは、KUZMAのリファレンス。これにはリニアトラッキング・アームと、ベルト・ドライブのターンテーブルが装備されています。イコライザー・アンプはザンデンのLCR方式で、ターンオーバーとロールオフが、それぞれ16段と8段の切換になっています。したがって、あらゆるカーブのLP(SP)に対応できます。録音機は他社製のプロフェッショナル用ですが、ADコンバーター部に独自の技術を組み入れています。
品 番 | 内 容 | 解 説 |
---|---|---|
EZCD-001 |
ラヴェル/管弦楽曲集
アタウルフォ・アルヘンタ指揮/
録音:1950年代中頃 |
44歳でこの世を去ったスペインの奇才指揮者アルヘンタは、その若すぎる死ゆえ遺された録音は極めて少ない。このディスクにはアルヘンタの重要なレパートリーであるラヴェルの4作品が収録されており、「道化師の朝の歌」を除く3曲は初CD化となる。 師であるシューリヒトにも通ずる熱きスピリットはこのラヴェル演奏に脈々と流れており、アルヘンタがいかにバランス感覚の優れた天才指揮者であったかを痛感する。 なお、セント・ソリ管弦楽団はパリ音楽院管あるいはラムルー管のメンバーが主となりパリ・オペラ座等、他の楽団員が加わった臨時編成のオーケストラである。 「レコード芸術」誌 推薦盤 |
EZCD-002 |
モーツァルト/ピアノ・ソナタ全集第1巻 ヴラド・ペルルミュテール (ピアノ)
録音:1956年 |
ラヴェル直系のペルルミュテールならではのフランスの香り漂う優美なモーツァルト。モーツァルト生誕200年を記念して1956年に仏VOXで企画・録音され、フランス国内のみで発売、米VOXでは発売されなかった。マニア垂涎のオリジナル仏盤は中古店でも極めて希少でかなりの高値が付いている。プレイエル製ピアノから滴る宝石のような音の粒は永遠の輝きを持つ。フランス系レパートリーの録音が比較的多いペルルミュテールの貴重なモーツァルトである。 「レコード芸術」誌 準特選盤 |
EZCD-003 |
J.S.バッハ/
ブランデンブルク協奏曲全集第1巻
ヘルマン・シェルヘン指揮/
録音:1954年 |
シェルヘンのブランデンブルク協奏曲全集は、1960年のウィーン国立歌劇場管弦楽団とのウェストミンスター盤が有名だが、この録音は1954年のシェルヘン最初のブランデンブルク協奏曲全集で、LPでは全6曲を3枚組のバインダー・アルバムとして発売された。フランスの名手たちとの共演は非常に優雅で心地よく、全体的にゆったりとしたテンポをとり、各ソロ・パートが実に見事。 |
EZCD-004 |
モーツァルト/
ピアノ・ソナタ全集第2巻 ヴラド・ペルルミュテール (ピアノ)
録音:1956年 |
モーツァルト生誕200年を記念してフランスのみで制作された全集の2巻目。当時6枚のLPでこの全集が完結していた。ラヴェルの薫陶を受けたペルルミュテールが弾くモーツァルトは、銘器プレイエルの響きが何とも魅力的。元来のモーツァルト像がくっきりと目前に現れるかのような空間を作り上げている。 「レコード芸術」誌 特選盤 |
EZCD-005 |
サン・サーンス/
シャルル・ミュンシュ/
録音:1947年11月/1956年1月 (*) |
ミュンシュが指揮したサン・サーンスの「オルガン付」といえば、手兵ボストン交響楽団との1959年の録音が有名だが、正規録音がもう1つあった。これが1947年にニューヨーク・フィルを振った当録音である。ミュンシュは1946年にパリ音楽院管弦楽団の常任指揮者を辞任後フリーとなり、同年にボストン交響楽団を振ってアメリカ・デビューを果たす。その翌年に録音されたこの演奏から、これから始まるミュンシュの輝かしい時代を予感させるパッションが感じ取れる。また、ミトロプーロス指揮の「ヘラクレスの青年時代」を併録。演奏の機会の少ない秘曲だが瑞々しさ溢れる佳演である。 |
EZCD-006 |
J.S.バッハ/ ヤーノシュ・シュタルケル (チェロ)
録音:1951年 |
ベラ・バルトークの息子、ピーター・バルトークは1942年に渡米。父の死後、その偉大なる作品のレコード化を計画する。そして「バルトーク・ソサエティ」を発足、1949年には父の作品のリリースを開始した。さらに「ピリオド・レーベル」においてヤーノシュ・シュタルケルの一連の録音も手掛ける事となる。このバッハもその中の1枚である。伝説となった「松ヤニの飛び散る音が聞こえる」との形容はまさにピーターによるシュタルケルの録音への賛辞である。なお、当盤の復刻には米ピリオド盤ではなく、英ニクサ盤を使用しており、より豊かで、ふくよかな音色を堪能できる。 「レコード芸術」誌 推薦盤 |
EZCD-007 |
シューマン/ ヴラド・ペルルミュテール (ピアノ)
録音:1950年代初頭 |
ヴラド・ペルルミュテールの1950年代におけるシューマン作品集である。彼はこれら2曲を1980年代に再録音しているが、当ディスクは第1回目の録音の初CD化である。壮年期にさしかかる頃のこの演奏には師であるラヴェルから学んだ「音楽への畏敬」の精神が強く込められている。ペルルミュテールが遺した録音はラヴェルとショパンがそのほとんどを占めていると言っても過言ではなく、ドイツ・オーストリア物は決して多くはない。そういった事実からもここに収録されたシューマンの2曲は、再録音を決意させるほど彼にとって愛着のある、そしてかけがえのない宝物に違いない。 「レコード芸術」誌 準推薦盤 |
EZCD-008 |
ヴィヴァルディ/
ミケランジェロ・アバド (Vnと指揮)/
録音:1950年代前半 |
現代を代表する名指揮者クラウディオ・アバドの父であり、名ヴァイオリニストで教師でもあるミケランジェロ・アバドと彼の率いるミラノ弦合奏団の貴重な録音。イタリア・バロックの名作を集めた魅力的な内容で、ふくよかな弦楽合奏にミケランジェロ・アバドの味わい深いソロが見事に溶け込んだ実に心温まる演奏。またカンビーニの作品では20代前半の若きクラウディオ・アバドがピアノを弾いており父子共演が聴ける。クラウディオがカルロ・ゼッキやハンス・スワロフスキーに指揮法を学ぶ以前の録音で、指揮者アバドが誕生する直前の実に貴重な演奏に接することができる。 |
EZCD-009 |
モーツァルト/
パレナン四重奏団
録音:1950年代初頭 |
モーツァルトの最もポピュラリティを備えた名曲である「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」と「3つのディヴェルティメント」は、その親しみやすさゆえ録音もかなりの数にのぼる。ただ弦楽合奏版が圧倒的に多く、弦楽四重奏または五重奏による録音は極めて少ないのが現状だ。フランス系レパートリーを中心に多くの名盤を遺した名クァルテット、パレナン四重奏団によるこの貴重な四重奏ヴァージョンは均整のとれた精緻な演奏で、まさに端正優雅としか言いようがない。弦楽合奏版とは違い、奏者一人ひとりの細やかな表情が浮き彫りとなっており、軽やかな響き、サロン風な趣が実に心地よい。 |
EZCD-010 |
J.S.バッハ/ ヤーノシュ・シュタルケル (チェロ)
録音:1951年 |
ハンガリー生まれのチェロの巨星、ヤーノシュ・シュタルケルには4回ものバッハの無伴奏チェロ組曲の全曲録音が存在するが、ベラ・バルトークの息子ピーターが設立したピリオド・レーベルに1950年代初めに4曲の無伴奏の録音を残している。全集にはならなかったものの、シュタルケル最初のバッハの無伴奏録音として非常に重要な音源である。当CDに収録されている「第3・6番」は既発売の「第1・4番」と同じく、米ピリオド盤ではなく英ニクサ盤を原盤として使用しているが、前回と同じく20代の若きシュタルケルの豪快ながらも繊細な演奏が見事なまでに生々しく復刻されている。 「レコード芸術」誌 推薦盤 |
EZCD-011 |
モーツァルト/
ピエール・バルビゼ (P)/
録音:1950年代 |
フランスの名ピアニスト、ピエール・バルビゼ(1922~1990)はソリスト としてより室内楽においての活動が目立ち、特に、かの天才ヴァイオリニスト、クリスチャン・フェラスの伴奏者として名高い存在。このディスクは唯一のモーツァルトの 協奏曲録音で、ソリストとしてのバルビゼが聴ける貴重な音源である。また、伴奏 指揮はあの偉大なるフルーティスト、ジャン=ピエール・ランパルで、堅実な指揮 でバルビゼの煌びやかで典雅なピアノを盛り立てている。 |
EZCD-012 |
シェリング最初期録音集
ヘンリク・シェリング (ヴァイオリン)/
録音:1950年代初頭 |
今さら言うまでもないが、シェリングは人気の高いヴァイオリニストであり、遺した録音も数多い。その真摯な演奏スタイルが万人の心を掴んで離さないのは周知の事実であり、それを多くの録音から聴くことができる。だが、それは1950年代後半からのレコーディングであり、1950年代前半のシェリングを聴く機会はごく稀である。当CDはシェリングが30歳代のはじめに録音した2枚の10インチ盤を1枚にまとめたもので、後年のシェリングの芸風とのギャップに驚かされる。我々が持つ「折目正しい」シェリングのイメージを払拭する、この若き日の自由奔放な演奏には驚きを禁じえない。 「レコード芸術」誌 準推薦盤 |
EZCD-013 |
ラヴェル/
パレナン四重奏団
録音:1950年代初頭 |
フランスの往年の名カルテット、パレナン四重奏団のメイン・レパートリーであるフランス近代もの。とりわけ、ラヴェルとドビュッシーはそのステレオ録音がこの2曲の代表的な名盤として語り継がれてきた。このディスクはその1969年のステレオ録音より20年近くも前の1950年代初頭のモノラル録音である。当時のフランスの香りを伝えるかのようなパレナン四重奏団のこの演奏は、実に煌びやかだ。高貴な叙情性に満ちており、定番カップリングともいえるこの2大四重奏曲の膨大な音盤の中で燦然と輝いている。 「レコード芸術」誌 準推薦盤 |
EZCD-014 |
リスト/
ジギ・ワイセンベルク (アレクシス・ワイセンベルク)
録音=1050年代 |
ブルガリア生まれの鬼才ワイセンベルクは、1947年に華々しくデビューを飾るものの、自らの音楽を鍛えなおすべく、1956年より約10年間の隠遁生活に入る。 そして1966年に奇跡的な復活を遂げ、その才能を認めたカラヤンとの度重なる 共演や幾多のレコーディングを行い、目覚しい活躍を展開する。このディスクに収 められた「リスト作品集」は隠遁前の貴重な録音で、復帰後に再録音するステレオ 盤とは明らかに異なる、若きワイセンベルクの熱きピアニズムを体感できる。 「レコード芸術」誌 特選盤 |
EZCD-015 完 売 |
ベートーヴェン/
ヘンリク・シェリング (ヴァイオリン)
録音:1950年/1950年代初頭(*) |
このディスクにはヴァイオリンの巨星ジャック・ティボーがバックアップを惜しまなかった2人のヴァイオリニストの貴重なベートーヴェン録音が収められている。ヘンリク・シェリングが弾く「協奏曲」ではティボー自ら指揮者として伴奏を務めており、これがシェリングの記念すべきベートーヴェンの協奏曲の初録音となる。恩師のサポートを得て、若きシェリングが朗々とした伸びやかなベートーヴェンを聴かせる。オークレールが弾く「スプリング・ソナタ」は元々フランス国内で教材用に制作された珍盤で、彼女のベートーヴェンは大変貴重。作曲家デュティユー夫人のジョワとの共演が聴き物。 「レコード芸術」誌 推薦盤 |
EZCD-016 |
ハイドン/
アンドレ・クリュイタンス指揮/
録音:1950年代 |
ベルギーに生まれた名匠クリュイタンスは1955年にフランス人系指揮者として初め てバイロイト音楽祭に登場、またベルリン・フィルとベートーヴェンの交響曲全集を完 成させるなど、フランス音楽のみならずドイツ音楽にも手腕を発揮した。しかし遺した 録音は、やはりフランス系作品が多く、独墺系レパートリーは決して多いとは言えない。 その中で、古典派交響曲の傑作であるこのハイドンの2曲はまさに貴重な音源であり、 ドイツ的な重厚さとフランス的な優美さを併せ持った、クリュイタンスのみが成し得る 類稀なハイドン演奏である。 「レコード芸術」誌 推薦盤 |
EZCD-017 |
J.S.バッハ/
ヘンリク・シェリング (ヴァイオリン)/
録音:1951年/1955年(*) |
このディスクにはシェリングが30歳代に録音したバッハの2曲の協奏曲の記念すべき最初の録音が収められている。真摯な演奏スタイルは後の2種の録音にも共通するが、やはりこの年齢ならではの若き情熱が随所に感じられ、他とは一線を画している。伴奏指揮は、当時のパリ音楽院で指導していたガブリエル・ブイヨンで、ペルルミュテールやフルニエとトリオを組んでいた経歴を持つ。また1955年録音 の「無伴奏ソナタとパルティータ」全曲盤から「シャコンヌ」を併録。若きシェリングの伝説の名演として名高い。 「レコード芸術」誌 準推薦盤 |
EZCD-018 |
ハイドン/
ドロルツ四重奏団
録音:1950年代初頭 |
ドイツ屈指のカルテットであるドロルツ四重奏団は主にカラヤン時代を支えたベルリ ン・フィルの主要メンバーから成っており、この録音におけるチェリストのリーバウ以 外の3人は同オケの初来日公演に
も同行、その後もカラヤンと共に数回来日を果たしている。 ドイツのカルテット特有の重厚さ、そして耽美的といえる深みを感じさせるこの 演奏は、ドイツ古典派音楽の理想的な音楽造りとなっており、多くのマエストロたちを 支えた彼らならではの世界を繰り広げている。 「レコード芸術」誌 準推薦盤 |
EZCD-019 |
モーツァルト/
ジャン=ピエール・ランパル指揮/
録音:1950年代初頭 |
フランス管楽五重奏団のメンバー(ランパル、ピエルロ、ランスロ、クルシェ、オンニュ)を中心としたフランス管楽アンサンブルは、まさにフランスを代表するトップ 奏者たちで組織されており、その自在なテクニックと完璧なアンサンブルは、ハルモニームジークの愉しさを存分に満喫させてくれる。ここではランパルが指揮を受け持 っており、彼の感性が演奏全体に色濃く出た、等身大のモーツァルトを堪能できる。 |
EZCD-020 |
シベリウス/
ヘンリク・シェリング (Vn)/
録音:1951年 |
シェリングはこのシベリウスとポンセの協奏曲を幾度か録音しているが、この録音は 1951年、シェリング33歳時のものである。 北欧とラテンという実にユニークな カップリングであるが、両曲とも後年の録音に比べ、スケール感よりは若さが前面に 出たストレートな演奏といえる。その点で我々が知る真摯なシェリングとはひと味も ふた味も違う、直情的ともいえるシェリングを聴く事ができる。 |